原っぱこえて、丘こえて。

あたしはナミダをとりもどす旅にでた。

めざすは魔女まじょのいるところ。

でも、魔女ってどこにいるの?

だいじょうぶ。なんとかなるなる。

今は、目のまえの道を歩くんだ。


*********


ドッっガゴゴオォォォォォォォォン

とつぜんの大きな音とともに、あたしの体はピョコンととびあがった。

いあがる砂けむり。

目の前にはきょだいな手。

そして、空を半分かくしてしまうほどの大きなカゲ。

ぶとい声がコダマする。

『おっと、ここはとおさねぇべ。』

なにやら、みどり色のカイブツがあたしをトオセンボしてきた。

それにしても、すっごいマッチョさん。

「コホっ……なに、いきなり……なにかゴヨウ?」

マッチョのカイブツは、おおきなひとつ目をほそめながらジッーとあたしを見た。

『???おめぇ、人間にんげんじゃないべ? なんだ?』

「あたしは 人形にんぎょう よ。それに " おめぇ " じゃないわ。エルシーよ。あなたのお名前は?」

『おいらか?ギャハギャハ!おいらはトロルってんだ。ニンギョウだかなんだか知んねぇが、ここから先はとおさねぇべ。とおりたかったら、おいらと勝負しょうぶしてつことだべ!!!』

なんだかヘンなことにまきこまれてる気がする。



「あたし、魔女のところに行きたいんだけど。」

『魔女だぁ?……たしか、ズゥ〜と先のそのまたむこうに魔女がいるって聞いたことあるべ。

でもよ、ここをとらねぇと行けぇねな。ギャハギャハ!』

すっごくイヤなかんじ。

でも思いがけず、いいことを聞いた。

どうやらこの先に魔女がいるらしい。

「勝ったらとおれるのね。」

『おうよ。勝てればな。』

「なんの勝負をすればいいの?」

『え??勝負してくれんのか!? おめぇ、いいやつか? さっきから人間どもはみんなにげだしてよぉ……ぜんぜん勝負してくんなかったんだよぉ。どうしてだべ……。』

《 こんなカイブツ見たらそうなるわね。》と思ったが、あたしは言わなかった。



「で、なにすればいいの?」

『ギャハギャハ!おめぇチッコイから、えらばせてやるべ。カケッコでもいいぞ。ジャンプでもいいぞ。 高くとぶか?遠くまでとぶか?
もちろんチカラくらべでもいいべ。あいてになんねぇと思うがな。ギャハギャハギャハ!!!
あっ!頭つかうのはなしな。おいらにがてだべ。』

なにそれ!?

そんなんじゃトロルが勝つにきまってる。

「ちょっと考えさせて。」






ぜったい負けることがわかってる勝負をしろだなんて、ひどい性格せいかく

だって、トロルはキンニクモリモリ。

見るからに力が強そうだ。

ふつうに勝負したって、あたしに勝ち目はない。

カケッコも負ける。

ジャンプも負ける。

チカラくらべってなんだろ?

うでずもう?手おしずもう?

きっと負ける。いっぱつで負ける。

なんとか勝つ方法を考えなきゃ。

あたしは魔女のところに行かなきゃいけないんだ。

――ちょっと待って……手おしずもう……。

あたしは、そうだッ!とひらめいた。



「じゃぁ、トロル。あたしの前に立って。」

あたしはクイックイッと手まねきした。

『おうおう。なんでもいいべ。楽しみだべ。ギャハギャハ!』

トロルはかたで風をきって、よゆうシャクシャクだ。

「かた足あげて。」

あたしは左足をあげた。

左足と右足をクロスさせて数字の " 4 " をつくってみせた。

『なるほど。いっぽん足で立てばいいべ。』

「そうそう。つぎに、両手を広げて。」

あたしはゆび先をピンっとのばし、地面とウデを水平すいへいにしてみせた。

『ん?こうか?で、どうするんだ?』


あたしはとびきり早口で、勝負をスタートした。

「このまま動いちゃダメ。ちょっとでも動いたら負けね。」

『なぬ!!!?』




われながらナイスアイデアだ。

" 動かない勝負 " なら、頭もつかわない。

チカラもつかわない。

これならどっちが勝つかわからない。

でも、あたしは人形だからジッと動かないのは、ちょっと得意とくいだ。




しばらく時間がすぎた。

『なぁ、いつまでこれやるべ。』

「あたしか、トロルか、どっちかが動くまでよ。」

『これ、楽しいか?』

「いやなら、負ければいいじゃない。」

" 負け " という言葉にトロルはムッとして、背すじをピシッとのばした。


さらに時間がすぎた。

あたしはあいかわらず、すこしも動いていない。

トロルはあげた足がムズムズしているのだろう。

足のゆびがイモムシみたいに動いている。

「……あし、動いてるわよ。」

『動いてねぇ!! 動いてねぇべ!!!!!!』

トロルはあせった声でどなる。

そして、足のゆびをピタッと止めてみせた。



さらにさらに時間がすぎた。

小鳥のさえずりや、風がふきぬけていく音だけが聞こえてくる。

あたしはまだまだ平気へいき。1ミリだって動いてない。

でもトロルはちょこちょこ動いて、ヘンテコなおどりをおどってる。

きっと体のいろんなところが、こそばいにちがいない。

ガマンしてるのが顔でわかる。

だって、さっきからニラメッコしてるみたい。あははっ。

ほんとうはもう勝負ついてるんだけど、こういう時ははっきりと勝ち負けがわかるまでやったほうがいい。

ほら、もうそろそろ……。



ドッつ バたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああんっ!!!

いきおいよくトロルがスッたおれた。

はいっ、勝負アリ!

『ギャハギャハギャハ!!!!!! ここここ、こそばい!! もうムリだべ!!!』

「そ。じゃぁ、あたしの勝ちね。」

背中や足をかきまくっているトロルの横をあたしはトコトコと通りすぎた。




すると、すぐに後ろのほうから足音が聞こえてきた。

ドスン ドスン ドスンっ!

トロルがあたしをおいぬいて、道の先でまたトオセンボした。

「なに?」

『ここをとおりたかったら、おいらと勝負だべ!』

「あたし、さっき勝ったわよ。」

『さっきはさっき。今は今だべ。ギャハギャハ!』

こまった。根っからの負けずぎらいだ。

たぶんあたしが何回勝っても、ずぅーと先まわりしてトオセンボするつもりだ。



『さっきはおめぇがきめたから、つぎはおいらがなにで勝負するかきめるべ。カケッコで勝負だべ!』

「カケッコ!?そんなのムリじゃ……。」

と言いかけたが、あたしはまたひらめいた。

今日はなんだかさえてる。

「!カケッコでいいわ。でも、ゴールはあたしにきめさせてちょうだい。」

ふつうにカケッコしたら、トロルにかなうはずがない。短い距離きょりならなおさらだ。

でも、う〜んと遠くにゴールがあったら……。



『いいべ、いいべ。どこにするべ。あっちの木だべか?それともむこうの川だべか?』

「ちがうわ。むこ〜のほうに海があるわ。」

あたしは、すすむ道とはまったくちがう方向をゆびさした。

「海の水にタッチできたらゴールよ。遠いから、きゅうけいもありね。でも休んでると、あたしすぐに追いぬいちゃうから。」

『ギャハギャハギャハ!なら、休みなしでゴールしてやんべ!』

あたしはスタートのポーズをつくった。

トロルも横にならぶ。

「いくわよ。よーい……ドン!!!」


ズドッドドドドドッドドドドドドドド

ものすごいいきおいでトロルは走っていった。


ズゴゲッ!!

「アァァァァァれェェェエェェェェェェェェェ!!!!!」

トロルの大きな足に当ったったなにかが、思いっきりスっ飛んでいった。

よく見えなかったけど、グランディだったような……。

まさか、そんなわけない。

グランディはミシェルのお家にいるのよ。

草むらの中にいるわけないじゃない。

きっと気のせい、気のせい……。



あたしはちょこっと走って、すぐに走るのをやめた。

ふりかえれば、そこにはだ~れもいない。

道をトウセンボするおジャマなカイブツは、ただいま海に向かって 全速力ぜんそくりょく

「やった!大成功だいせいこうっ!」


これが " トロルのいないあいだに、道をとおってしまおう " 作戦だ。

でもトロルってば、すっごい足 はやい。

またたく間に、いちばん遠い丘の上からもいなくなってしまった。

トロルが見えなくなったのをかくにんして、あたしはまた道を歩きはじめた。

どうやらこの先に魔女がいる。

そして、ナミダをとりかえすんだ。



つづく

 

 

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