一夜いちやあけたら、たいへんなことになっていた。

ランダさんがベッドでこんでいた。

ねつもあって、とてもくるしそう。

どうしよう……。

きっとあたしのせいだ……。



*********

 

「グランディ!どうしよう……。」

「……そうですわね……こまりましたわ。病気びょうきのモトがわかりませんもの……。」

「きっと、きのう雨にぬれたから。ミシェルとかはアレ……" カゼ " っていうのになってた!」

魔女まじょ風邪かぜ?オホホホ。ちょっとかんがえにくいですわね。」

「じゃぁ、これってなんなの?あたし……どうしたら……。」

「エルシー。まずは、おちついたらいかが?」

あたしは心がみだれていた。

だって、あらしの中ずっとあたしをさがしてたんだ。

あんなに元気げんきだったのに……。

なにもできない自分がなさけなくて、かなしくなった。


魔女がうっすらと目をあけた。

『……ケケ…人だすけなんてするもんじゃぁ……ないね……。』

「ランダさん!だいじょうぶ?」

魔女はつらそうにいきをする。そして、あたしとグランディをしずかに見つめた。

「わたくしたちになにかできること、ありませんかしら?」

「あたし何でもするわ。ランダさん。なにかない……。」

魔女は天井てんじょうを見あげ、そして大きくカタで息をした。

『……クスリを……つくるよ……紙とペン、もってきな………。』



あたしとグランディは、ダダダッと魔女の部屋へやへダッシュ。

羽根はねペン、黒インク、それに紙は……テキトウなのがなかったので、そのへんの紙ぶくろを手にとった。

「あ…ふくろの中に何か入ってる……。」

「今、ひつようなのは紙ぶくろの方ですわ。」

グランディはそう言うと、紙ぶくろを逆さまにして中身なかみをぶちまけた。

あ~ぁ……。

でも、こうしちゃいられない。あたしとグランディは魔女のところへいそいだ。



ベッドに羽根ペン、黒インク、紙ぶくろをならべる。

魔女はくるしそうな顔をしながらも、紙ぶくろにペンをはしらせた。

まる さんかく にミミズがおどっているような 記号 きごう がならぶ。

あたしはぜんぜん めない。

そもそも、ミシェルが読んでる 絵本 えほん 文字 もじ だってわかんない。

魔女がつかう文字なんてなおさらだ。

そんなあたしをシリメに、グランディは「ふむふむ……う〜ん……。」とか言ってる。

「ねぇ、グランディ。読めるの?」

「もちろんですわ。クスリの作りかたを書いてますわ。」

「すすすす、すっごい……。」

「まぁ、それほどでもございますのよ。オホホホ。」



魔女は書きおわると、文字の 一部分 いちぶぶん をマルでかこった。

『……これが……ない……。』

羽根ペンが手からこぼれおち、そのまま目をとじてしまった。

「これってなんなの?ねぇ。」

あたしは魔女の ふく をゆすったが、ねむってしまったみたいだ。

グランディとあたしは、魔女にしっかりと 毛布 もうふ をかけてあげた。



「" モラリィの花 " と書いてありますわ。」

魔女がさいごに、『 ない 』と言ってマルをした文字だ。

「ざんねんですが、わたくし、この花については何も知りませんわ。ほかの材料ざいりょうはおかたづけの時に見かけた記憶きおくがございますけど……。」

「どんな花かもわかんないし……。それに、どこにさいてるの?」

「それがわかれば、苦労くろういたしませんわ。」

「だよね……。」

「せめて、このあたりにくわしいかたでもいればいいんですが……。」

「そんなの……。?そういえば、いた!!ノームさんたち。ここにくる前にあった小人こびとは?」

「オホホホ。なぜそれを早く言わないんですの?ノームと言えば土の精霊せいれい
森や山のことは何でも知ってると聞いたことがございますわ。
これはひょっとすると、ひょっとしますわね。で、どちらにいますの?」

「わかんない。」

ゴゲッっ

「っで!!!」

期待きたいさせておいて、なぐりますわヨ!!」

「ひどい……。さきに、なぐってるし。」

「ハァ……。けっきょく、フリダシですわね……。」

「??ちょっとまって。ランダさんはノームさんたちを召使めしつかいにするために一回は会ってるはず。だから……。」

「「バズー!!!」」

あたしとグランディのこえがハモった。



あたしたちはかけ足で玄関げんかんびでた。むかうはにわだ。

庭のサクの上がバズーのよくいる場所ばしょだから。

そこに行くと、いつものようにバズーがサクの上でとおくを見ていた。

「ねぇ、バズー。ノームさんのんでるところ知ってる?
もし、知ってるならつれてってちょうだい。
ランダさんを たすけるためにモラリィ?って花の場所をノームさんたちに聞きたいの。」

バスーはちらっとこちらを見る。

ちょんとサクをけりあげると、バサバサっと飛びたった。

そして遠くはなれたのところの木に止まると、あたしたちの方をうかがっているようなシグサをした。

「どうやら「ついてこい!」ってことのようですわ。行きますわよ、エルシー。」

「うん!」



*********



バズーが案内あんないしてくれたのは森の中。

そこにはこの森一番じゃないかってくらいの大きながあった。

人間のお家を一周いっしゅうするのと同じくらいの大きさだ。

樹のみきにそって歩いていくと、ちょうどあたしたちが入れるくらいの小さなウロがあった。

どうやらここがノームの住んでいるところらしい。



あたしたちは、地下ちかへとつづく坂道さかみちを歩く。

太陽たいようの光がとどかなくなる地面じめんの下はまっくら……と思ったんだけど、

「びっくり。明るい。」

「そうですわね。これはヒカリゴケのせいですわ。」

グランディが言うには、" ヒカリゴケ " はランプのように光る 植物 しょくぶつ らしい。

それが 天井 てんじょう にびっしり えて、おかげで歩くのにはこまらなかった。


しばらく進むと、広い 空間くうかんにでた。

そこには小さな家がちならぶ村があった。

「ここがノームさんたちの住んでるところ?」

「でも、だれもいないですわ。」

あたしたちはテクテクと歩いていき、広場ひろば についた。

だれにも会わなかった。

「お〜い。こんにちは〜。」

「ちょっとぉ?どなたかいらっしゃいませんの?」



すると、むかいの家のまどから赤い帽子ぼうしがちょこっと動いたのが見えた。

「エルシーだ!みんな!エルシーが来てくれたよっ!!!」

タタタタッと3人のノームがかけよってきた。

見おぼえがある。あのいていたノームさんだ。

ノームさんたちは、あたしにギュっとハグしてきた。

「だれかと思ったよ。」

「そうそう、知らない足音あしおとだったから、みんなでかくれてたんだ。」

「ねぇ、みんな!!わりに魔女のところに行ってくれたエルシーだよっ。」

ひょこひょこと、どこからともなく赤い服のノームがわいて出てきた。

えっ?こんなにいたの?ってくらい。

ノームさんたちは、あたしたちを歓迎かんげいしてくれた。



魔女の家の前でわかれたあと、あたしのことを心配しんぱいしてたんだって。

でも、わらないようすでまた会えて、すごくよろこんでる。

あたしは、今日ここに来たワケを話そうとした。

「魔女のランダさんが病気びょうきになったの。今はベッドでねむったままなの……。」

あたしの言葉を聞いたノームさんたちは、

ヤッタァアァァァァァ!!!!
ヨッシャァァァッァァ!!!!
これで安心あんしんできるぅぅぅっぅぅぅ!!!!
ざまぁあぁぁ!!!!
よかったぁぁあぁぁぁあぁっぁ!!!!

ノームたちは大声おおごえでよろこんだ。

とんだり、はねたり、手をたたいたり。


そうよね……ノームさんたちは魔女がこわかったんだ。

その魔女が病気で動けない。

よろこぶ気持きもちは、あたしにもわかる。

横にいるグランディはウデぐみをして、だまってる。

何やらムツカシイかおをしてる。



あたしはノームさんたちのよろこびが少しおさまるのを待って、はなしつづけた。

「じつは、昨日きのうね……。」

川にりに行ったこと。

大雨おおあめで川が洪水こうずいになったこと。

川におちて、魔女に助けられたこと。

きっとそのせいで魔女が病気になってしまったこと。

「だから、ランダさんの病気をなおしたいの。クスリを作るのにモラリィって名前の花がいるの。どこにあるか知らない?」

……………………………
……………………………
……………………………

あんなにはしゃいでいたのに、ノームさんたちはきゅうにだまりこんだ。

もちろん、こうなることはわかってた。

魔女が元気になって、ノームさんたちにいいことなんて何もない。……でも、

「モラリィのこと……おしえてほしいの。」

「知ってますの?知らないんですの?それくらいおっしゃってくれもてもいいんじゃございません?」

グランディも横から声をだす。

ノームさんたちはおたがいにこまった顔を見せあっている。それだけで、返事へんじをするようすはない。



召使めしつかいをよこせ!』なんて言ってきた魔女は、本当にこわかったんだ。

その魔女は、今はベッドから動けない。

そのままどうにかなれば、この先、ノームさんたちは安心してらせる。

きっと、そんなことをかんがえてるんだ。

わかるけど……あたしだってあきらめられない。

「……ランダさんを助けるの。……おクスリ作る…の……。」

みんなからは声ひとつでない。



「エルシー。時間のムダですわ。帰りますわよ。」

グランディはクルッと向きをかえ、出口の方へ歩き出した。

せっかく希望きぼうをもって来たのに。あたしはかなしかった。

「……わかった……ムリ言って……ごめんなさい。」

あたしは、グランディの背中せなかいかけた、その時……



「―――知っとるよ。モラリィの花の場所じゃろ。」

ノームさんたちの中から声がした。

声のぬしは、白いヒゲをたくわえたおじいちゃんノーム。

「やれやれ…しょうのないやつらじゃ。エルシーさんがワシらを助けてくれたこと、もうわすれてしまったのか?こまった時はおたがいさまじゃろう。のぉ…みんな……。」

「あの……、それじゃ……。」

「エルシーさん、そして、そこのうつくしいおじょうさん。少しだけ、ワシらに時間をもらえんかのぉ。」

「うつく……。あら…まぁ、そこまでおっしゃるなら…ホホホ……少しくらい、まってあげてもよくってよ。オホホホ。」

グランディってば、調子ちょうしいいんだから。

でも今のって、グランディがキゲンわるい時につかえそう。おぼえとこ。



このあと、おじいちゃんノームはみんなをやさしくさとしてくれた。

はじめはみんな、ムチャだって顔してたけど。

だけど、おじいちゃんノームの説得せっとくで、魔女が元気になるまでノームのみんなが手伝てつだってくれることになった。

よかった。これでモラリィの花の手がかりがつかめた。

おじいちゃんノームがしずかにあたしによってきた。

そして、ほかのノームさんたちに聞かれないようにコショコショと話しをする。

「エルシーさんや。ワシらはそれでも魔女をおそれておる。それはわかってくれ……。」

あたしも小さな声で「うん。」ってかえした。




つづく

 

 

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万年霧の悪魔