ノームさんたちの何人なんにんかは、魔女まじょ看病かんびょうをするために魔女の家に行ってくれた。

そして、あたしとグランディは山に向かった。

半日はんにちほど行った山の中にモラリィの花があるって、おじいちゃんノームがおしえてくれた。

でも、その山はずっときりがかかって、れることがない。

それに、悪魔あくまんでるってウワサがあるから、ノームさんも行かないんだって。

だいじょうぶよ。グランディもいるし。きっと……。




*********



「うわっ!」

まっ白な霧があたしたちを通りぬけていった。

「ホント、何も見えませんわね。」

「こっちであってるのかな?道にまよってない?」

あたりは霧をおおわれて、景色けしきなんて見えない。ぜんぶしろ一色いっしょくだ。

道もちょっと先までしか見ることができない。

道をまちがえてても、まちがえていることすらわからない。

「立ちどまってもしかたありませんわ。とにかく上へ上へとすすみましょう。」

「うん。」

グランディの言うとおりだ。はやくモラリィの花を手にして、おクスリを作るんだ。



おじいちゃんノームからモラリィの花のことも教えてもらった。

モラリィの花はうすい青色をしている。

花の真ん中は白。花びらは5枚あって、こまかくキラキラ光るらしい。

そして、この山のどこかにある。




ズゴゴゴゴゴゥゥゥゥォッォオオォォ

「わわっ!!」

霧のカタマリ?と言うか、くもの中に入ったみたい。

目の前が見えなくなって、足が止まる。

「エルシー。だいじょうぶですの?どこにいらっしゃるの?」

「うん。だいじょうぶ……。」

『……あたしはここよ。』

…………………………へ?

雲が通りすぎて、 お たがいが見えるようになったとき……あたしがもう一人・・・・いた。

「えぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇえぇ!!」
『えぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇえぇ!!』

??なにこれ?どういうこと?なんであたしが……カガミ?

あたしは目をほそめて、ジーっと見た。

『あなた!さてはニセモノね!!』

かってにしゃべった!カガミじゃない。しかもあたしをニセモノよばわりっ!!!

「ちょっと……なに言ってんのっ!?あたしはホンモノよ!ニセモノはあなたでしょ?」

『そんなわけない!ホンモノはあたし。このニセモノっ!』

あたしはかみをつかまれた。こうなったらあたしだって!

相手あいての服をワシづかみにして、

正体しょうたいみせなさい!ニセモノっ!」

「オホホホ。お二人ともおよしになって。なるほどね……エルシーが二人……。これがこの山の悪魔あくまってことかしら。」

「グランディ!こいつニセモノよ!」
『グランディ!こいつニセモノよ!』

「こまりましたわ……。まるでウリふたつ。見た目で見ぬくのはむずかしいですわね。それなら……。」

なにやらグランディがニヤリとわらったように見えた。

「お二人とも、右手をあげてくださらない?」

あたしとニセモノは右手をあげた。

「なに?」
『こう?』

「そうですわ。つぎに左手もあげてくださいな。」

あたしとニセモノはバンザイのポーズをした。

「わたくしの言う通りに動いてくださいな。それでどちらがホンモノかわかる気がいたしますわ。いきますわよ……

右手さげて!
右手あげないで、左手さげて!
両手あげて!
左手さげないで、右手さげない!
左手さげて、と見せかけてやっぱりさげない!」


「え?あれ?わっとと……。」
『よっ!はっ!……ん?』

グランディに言われるがまま、手をあげたりさげたり。

でもちょっと早すぎる。あたし…ついてけない。

だけど、それはニセモノも同じだ。

「足あげて!
足さげないで、ちょっとあげて!
もっとあげて!
もっとあげると見せかけて、もっとあげる!」



「うわっ、わっぁぁあぁ!!」
ドタッ……

あたしは後ろにおもいっきりたおれた。

「ててて……。」

ニセモノはバタバタしながらも、なんとかこなしたみたい。

『どう?これであたしがホンモノだってわかった?』

「ウソ!?ちょ…っ、まって……。」

「オホホホ。ごめんあそばせ。わたくしエルシーの運動神経うんどうしんけいがいいのか悪いのかぞんじあげませんでしたわ。これは……失敗しっぱいでしたわね。ぷっ……。」

あっ―――!グランディ。あそんでるっ!

わらいをこらえて、かたがピクピク動いてる。

『ちょっとグランディ。ちゃんとやってよ。』
「そ…そうよ。あそばないで。」


「そうね……ふふっ……つぎは……ホンモノのエルシーなら、きっとわたくしの " いいところ " を10 は言えるんじゃございません?」

『グランディは " 目がキレイ "! " みんなにやさしい "! " 服のセンスがいい "!……。』

「えっと、グランディは " 美人 " だし、それに " 助けてくれる " し、いつだって " 明るい " し……。」

「お〜ホッホッホッ!そうでしょうとも!もっと、わたくしをホメてもくってよ!!」



「ねぇ!これでホントにわかるの?」

『" やっぱりわかりません " はナシよ!!』

「……あら……お二人とも目がシンケンですわね。オホホホ。
それでは……そうね、わたくしのことをどう思っているのか 正直しょうじきに話してごらんなさい。
それでわかるような気がしますわ。では、そちらのエルシーから。」

あたしが最初さいしょだ。え〜と……正直に言えばいいんだ、よね。

「グランディは……いい人なんだけど、たまにイジワルしてくるのはどうかなって思う。
それにちょっと 乱暴らんぼうだし、グーでなぐるのはやめたほうがいいと思う。」

グサっ

『グランディはおじょうさま言葉ことばでおしとやかだけど、たまに下品げひんよね。
すぐ 調子ちょうし にのるし、レディってかんじじゃないわ。
あと、さっき服のことをほめたけど、色は 今風いまふうじゃない。ダサいと思う。』

グサグサっ


「き……き……聞いたわたくしが……間ちがってましたわ……。」

『ほら、ホンモノはあたしだったでしょ!』
「まって!ホンモノはあたしよ!あたし!」

「オホホホ。それにしても、これではどうしようもございませんわね。
ホンモノは本当のことしかおっしゃいませんし、ニセモノはウソしかおっしゃいませんし……。
ほとほと、見きわめがむずかしいですわ……。」

『だから、あたしはさっきから本当のことしか言ってないわ。』
「だから、あたしはさっきからホントの……。」


?……ちょっと……これってヒント?

これがグランディの出したヒントなら、答えは " あれ " を言うしかない。

でも、ちがってたら……グランディが気づいてくれなかったら……あたしがニセモノになる……。

ニセモノになったあたしは、それから……どうなるの?

…………だいじょうぶ。きっと、だいじょうぶよ。あたしはグランディを しん じる!

大きく 深呼吸 しんこきゅう をして、かくごをきめ、―――さけんだ!



「あたしが!!!!ニセモノよ!!!!」


…………………………………。


『あはは!!ほら見て!ニセモノが正体を出したわ。ねぇ、グランディ!!!』

ニセモノはオニの くび をとったみたいによろこんでる。

グランディがあたしの前につめよってきた。

「あなた、ニセモノなの?」

「……あの……あたし……ニセモノ……。」

グランディの顔がムッとしてる。もしかして……ダメだった?

グーでゲンコツのパターン……かな?

そうなることが、いっしゅん頭をよぎった。

目をつむってゲンコツを待つあたしを、グランディはそっとだきしめた。

「いえ……ホンモノはあなたじゃございませんこと。」

「……え?」

『ちょっと!いま、ニセモノって 白状 はくじょう したじゃない。どうして……。』

「オホホホ。まだ、おわかりになりませんこと?
ちなみにそちらのエルシー。自分のことを " ニセモノ " とおっしゃること、できて?」

『あたしはホンモノよ。なんでそんなこと言わなくちゃいけないの!』

「ウソでよろしくってよ。ためしに " ニセモノだ " とおしゃってみて。さぁ…。」

『うっ……グッ……グェ……。』

「ホンモノのエルシーはホントもウソも言うのよ。
でも、あなたはそのようではないみたいですわね。オホホホ。」

やっぱりそうだった。よかった。あたしもグランディと同じこと考えてた……。

『ゲッ……ゴッ……ゴノォ……。』

ニセモノはドロドロととけはじめた。あたしの 姿 すがた のまんまで……。

そして、だんだんと黒い小人のかたちにかわっていく。



ゲシっ!

グランディはすかさず小人の頭をつかんだ。

「オホホホ。あなた、ドッペルゲンガーでございましょ?」

『ちがやい。』

「グランディ。その小人のこと知ってるの?」

「もちろんですわ。すべてのものを うつ 幻惑 げんわく の悪魔。そして、ウソしかしゃべらないんですのよ。」

「……グランディ…それ、いつから気づいてたの?」

「え?オホホホ。それは…… 最後 さいご までわかりませんでしたわ……えェ…ッホホホ。」

ぜったいウソだ。この口ぶりは 最初 さいしょ からわかってたんだ。




「いいこと、ドッペルゲンガー。わたくしたち、モラリィの花を さが しにきましたの。
あなた、どこにあるかごぞんじ?」

『知らないよ〜。』

「そう…ではこちらに行けばよろしいのかしら?」

と、グランディはなぜかあたしたちがきた道を ゆび さした。

『そうだよ。こっちだよ。』

「それでは、エルシー、まいりましょう。」

グランディは指さした 方向 ほうこう とは 反対 はんたい の道を歩きはじめた。

「あれ?グランディ。どこいくの?こっちじゃないの?」

「ドッペルゲンガーはウソしかしゃべれませんのよ。ですから、答えはかならず ぎゃく になりますわ。」

グランディの手は、もうはなさないぞってくらいガシっとドッペルゲンガーの頭をにぎっている。

「オ〜ホッホッホッ!!!!!! 完璧 かんぺき なウソツキは、こうなると 正直 しょうじき もの とかわりませんわね。
モラリィのこともごぞんじのようですから、案内あんないしていただきましょ。ホッホッホッ!!!!」



どっちが悪魔なんだか……う〜ん。




つづく

 

 

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